「ゆみちゃーん、りょうへいさーん」

 ザコペンギン達が遊びに来ました。

「おお、今日は早いな」
 
 ゆみちゃんがお出迎えします。

 ぞろぞろと入っていきます。

 弟があるものをじっと見ています。

「弟、何見てんだ?」

「あれなに?」

 弟はネクタイを指さしました。りょうへいさんが昨日、夜遅くまで仕事をしていたので、ネクタイを居間におきっぱにしていたのです。

「ああ、ネクタイっていって、男の人が仕事に行く時つけるもの」

「ねくたい・・・」

 弟はじっと見ます。

「やってみる?」

 ゆみちゃんが言いました。

「いいの?」

「いいよ」

 りょうへいさんが言います。

「ほら、弟、こっちきな」

 弟はとことことゆみちゃんの前に来ます。

「えっと・・・こうだったかな?」

 きゅっとゆみちゃんがネクタイを引っ張ります。

「くえっ」
 
 しまりすぎました。

「あはー、ごめん。ネクタイとかしないから」

「ったく、お前は」

「だって、したことないもん」

 りょうへいさんははあ、とため息をつきました。

「普通、旦那さんのネクタイ締める、とかあるだろうが」

「ドラマだけの世界だよ」

 ゆみちゃんとりょうへいさんは交代しました。

「よいせっと」

 りょうへいさんが器用にネクタイを締めてくれました。

「おし、これでよし」

「わーい」

 すとーん。

「・・・」

「・・・」

 ネクタイが床に落ちました。

「あ・・・肩ないからこいつら」

 ゆみちゃんがぼそりと言います。

「落ちたよー」

 弟が言います。

「弟、お前にネクタイは無理だ」

「えー」

 弟はしょんぼりとしました。

 りょうへいさんはちょっと何か考えているようでした。


 次の日。

 ザコペンギン達が公園でくるくる回っていると、ゆみちゃんとりょうへいさんがかりんちゃんを連れてやってきmした。

「あー、ゆみちゃん、りょうへいさん」

「弟、ちょっとじっとしとけ」

「?」

 りょうへいさんはあるものをすぽっと被せました。

「これなあに?リボンみたい」

 母が言います。

「これはな、蝶ネクタイってやつだ。ゴムで留めてるから落ちない」

「弟、見てみ」

 ゆみちゃんがコンパクト鏡を差し出します。

「ふわっ」

 弟の顔がぱあっと輝きます。

「ねくたい、ねくたい」

 弟はピョンピョンと跳ねます。

 ザコ悪と父が弟をじっと見てます。

「ほら、お前らの分もあるぞ」

 ザコ悪と父の顔も輝きました。