ゆみちゃん達が散歩をしていると、公園でザコペンギン達がごそごそしていました。

「なにしてんの?」

 ゆみちゃんが声を掛けます。皆がぎゅいんとゆみちゃんのほうを振り返りました。

「いつみても心臓に悪いなあ」

「ゆみちゃん、これみて」

 弟がてってってっと近づいてきて、ゆみちゃんに差し出しました。

「ああ。どんぐり」

「どんぐりっていうの?」

「そう」

「これはなんていうんですか?」

 ザコ悪が差し出します。

「それはまつぼっくり」

「まつぼっくり」

「これもね、秋になるんだよ」

「あき?この前食べたあき?」

 弟はこの前食べた焼き芋が気に入ったようです。

「これは食べれないから、絶対食べちゃだめよ」

「えー・・・」

 弟が残念そうな顔をします。

 りょうへいさんはしばらく考えた顔をすると、ゆみちゃんに聞きました。

「ゆみ、お前の裁縫道具は?」

「あ?襖の上のほう」

「ちょっと待ってろ」

 りょうへいさんは数分経つと戻ってきました。

「これを・・・こうして」

 りょうへいさんは何かごそごそとしていました。

「ほら」

 弟の首にかけてあげました。

「あ、いいなあ」

 母が言います。それはドングリで作ったペンダントでした。

「母、いる?」

「ほしい」

「じゃあ、まつぼっくりで作ってやるよ」

 りょうへいさんがまた作ってあげました。

「わーい、わーい」

 ザコ悪がじっと見ていたので、りょうへいさんは声を掛けました。

「ザコ悪もいるか?」

 ザコ悪は慌てて言います。

「いやっいいっすよ、あんな女子供がつけるようなものっ」

「ふうん。あっそ。父いる?」

「いるー」

 父は素直です。りょうへいさんは作ってあげると、父はぴょんぴょんと跳ねました。

「ザコ悪は漢だもんねー。いらないんだもんねー」

 じっと3人を見ているザコ悪にゆみちゃんはおいうちを掛けます。

「えっいやっそのっ」

「いるの?いらないの?」

 りょうへいさんが聞きます。

「いえっあのっ」

「あっそ」

 りょうへいさんは興味なさそうに言って、道具をしまおうとします。ザコ悪は慌てました。

「いやっでも、りょうへいさんがどうしてもいうなら・・・」

「欲しいなら素直に言えよ」

 りょうへいさんはザコ悪にも作って首にかけてあげました。

 ザコ悪は嬉しさとか、照れとか、色んな感情が溢れて、にまーと変な笑いをしました。

「ザコ悪、きしょい」

 ゆみちゃんが言います。

 ザコペンギン達はしばらく飛び跳ねていましたが、またごそごそし始めました。

 どうやらどんぐりやらまつぼっくりやらを収集してるようです。

 15分もすると、皆両手いっぱい抱えていました。

「どうすんの、それ」

「たからものにするの」

「まあ、いいけど。ぜったいたべちゃだめだからね。おなかいたくなるからね」

「はあーい」

 ゆみちゃん達は帰っていきました。



 その日の夜。弟は夢を見ました。

 とっても、とっても大きなドングリが目の前にあって、それがぱかっと二つに割れました。するとどうでしょう中からあのおいしい焼き芋が出てきました。

 弟はおなかがいっぱいになるまで焼き芋を食べました。


 朝、一番の早起きさんの母は弟がごそごそしているの気づきました。

「こらっ何してるのっ」

 弟はまさに、どんぐりを口にいれようとしているところでした。ぺし、っと母は弟の手からどんぐりを奪います。

「ゆみちゃんにたべちゃだめっていわれたでしょっ」

「だって、この中にはおいしい『あき』がはいってるんだよー」

 弟は母から取り返そうとします。

「だめったらだめっ」

 母は必死で説得しました。


 次の日、ゆみちゃん達が散歩していると、母がかけよってきました。

「ゆみちゃあん、りょうへいさあん」

「どうした?母」

「弟がどんぐり食べようとするの。『あき』がはいってるんだって」

「は?」

 ゆみちゃん達は弟を見ています。じぃっとどんぐりを見つめていました。

「弟」

 りょうへいさんが弟に声を掛けました。

「なんでどんぐり食べようとしたんだ」

「だって、ぼくより大きいどんぐりがあって、その中には『あき』がいっぱいあって、おいしかったんだもん」

「あき?」

「このまえ食べた、あき」

 りょうへいさんとゆみちゃんが顔を見合わせます。

「夢と現実がごっちゃになってるな」

「もう」

 ゆみちゃんがしゃがんで弟に目線を合わせます。

「弟、これはね、この前食べたあきとは違うの。これ食べたらおなか痛くなって、弟わんわん泣いちゃうよ?」

「痛くなるの?」

「すっごく」

 ゆみちゃんが怖い顔で言います。

 弟はまだどんぐりに執着があるようでしたが、痛い、という言葉で少し目がさめたようです。

「わかった、食べない」

「よし」

 ザコペンギン達は日課のくるくるとし始めました。

 ゆみちゃんが言います。

「今度、甘栗でも持ってくるか」

「やめろ、弟が混乱する」