だりぃぃぃ。
すこじねつがある模様。
でも今日はお気に入りのこの家庭教師です。
頑張ろう
あなたのすぐそばにザコペンギンはいます(鳥類ではありません) そんなザコペンギンの日常を描きます。よければ暇つぶしにでも。そして発見情報をお待ちしております。 あと、私は精神病患者です。小説と同じくらいまたはそれ以上に病状、薬のことなど忘備録の意味を込めて書いています。双極性Ⅱ型(いわゆる躁鬱病)ですので、鬱の時の日記はお目汚しです。「精神」と書いてあるブログは閲覧注意です。
制服が冬服になってしばらく、もうすぐ冬休みになろうとしていた頃。
絵衣理と棗が付き合いだして、2か月がたとうとしていた。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃい」
日曜日、絵衣理は棗の家にお邪魔するのが日課になった。
平日は一緒に帰り、土曜日は仕事まで絵衣理の家で漫画を読み、そして日曜日は棗の家に行く。
「あいつ、まだ寝てるから」
「いいですよー。あ、これ」
絵衣理はお土産を母親に渡す。
「あら、いつも悪いわね」
「いいえー」
絵衣理はそっと棗の部屋の襖を開いた。
棗の家は店の2階にあって、2LDK。母親と、棗とそれぞれの部屋がある。
棗の部屋は6帖の部屋で、ベッドが奥にあり、背の低いテーブル、テレビ、そして雑誌やCDの棚がある。
「おじゃましまあす」
絵衣理は小声で言って、中に入った。そっとベッドを覗き込む。すやすやと棗は寝ていた。
絵衣理は自然と微笑む。
「お疲れさまだね」
絵衣理は座布団に座ると、教科書とノートを取り出した。
絵衣理が棗の部屋についてから、1時間ほど、棗が起きるまで絵衣理は課題をしている。
1時間が経過した。
ベッドの布団がもそもそと動き出し。
「あ、ナツ君、おはよ」
絵衣理が笑いかける。
「・・・絵衣理」
まだ半分夢の中らしく、眠気を払うように頭を振った。
「今日は一段と眠そうだね」
「・・・常連さんが誕生日で・・・」
這うように、棗がベッドから起きてきた。そして、ばたっと絵衣理の膝の上で力尽きた。
「・・・ねむ」
「寝てていいよー」
「ん・・・でも絵衣理来てるし」
絵衣理はなでなでと棗の頭をなでる。
結局、棗は絵衣理の膝の上で二度寝した。
「試験の範囲配るぞー」
HRの時間、絵衣理は試験範囲のプリントを配られた。
(あー、もう試験か・・・。ナツ君ち行くの控えたほうがいいかなあ)
絵衣理のクラスは文系特進クラスだ。そのまま行けば、3年でも特進にあがれるが、成績が下がれば、落ちてしまう。結構上位の大学を目標としている絵衣理としては、成績を落としたくない。
(・・・今度、ナツ君とお話しよう)
「結構、うまくいってるみたいじゃない」
HRが終わり、綾女が寄ってきた。
「?なにが」
「高瀬君と」
「なんでそういうこと言うかなっ」
絵衣理は顔が赤くなり、そう言った。
「だって、絵衣理、男子とはふつうに話すのに、特に男の子と親しくなることなかったじゃん」
「・・・男子の幼馴染がいますぅ」
「ああ、あの先輩」
文化祭の頃、その幼馴染と棗を巻き込んでとらぶった。結果、棗と付き合うようになったのだが・・・。
「で、どこまでいった?」
「へ?」
「キスまではって知ってるけど、それ以降はしらにゃいんだなあー」
綾女がにやにやして言う。絵衣理はかっと顔が赤くなる。
「お、赤くなったどういうこと」
「あ、あのねえっ」
そこで、綾女がごん、と叩かれた。背後には聖がいた。
「ほら、アホなことしてないで生徒会行くぞ。夏掛さん、連れて行っていい?」
「どうぞどうぞ」
聖が綾女をずるずると連れていく。絵衣理はぺたんと席に座った。
そして日曜日。
「おじゃましまあす」
いつもどおり、絵衣理は棗のおうちに来た。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
棗の母親が迎えいれた。
「絵衣理ちゃん、ちょっと」
棗の母親が神妙な顔でダイニングへと呼び寄せた。
「?」
「まあ、座って」
絵衣理はダイニングに座った。
「はい、これ」
コーヒーを出される。
「えっと・・・あの」
「まあ、これを見て」
母親が紙を差し出した。
「?」
絵衣理が紙を受け取ってみる。
しばらくみて、絵衣理は戸惑った。
「え・・・と、これ、ナツ君の」
「そうよ」
「私、見ていいんですか?」
「いいから、見て」
それは、棗の1学期からの成績表だった。
成績は・・・微妙。
1学期はかろうじて赤点をまぬがれているという点数。そして2学期の中間は
「赤点・・・ありますね」
「・・・そうなのよ」
母親ははあ、とため息をついた。
「私もねー、夜、仕事に出させてるから、強くは言える身ではないんだけどねー・・・この点数じゃあ」
「はあ」
そこへ、がちゃ、と扉が開いた。浴室の扉が。
「あ、あれ?ナツ君、お風呂入ってたの?」
絵衣理が驚く。
「おはよう、絵衣理」
「ナツ君、なんか着なよ」
棗は上半身裸だった。絵衣理は目のやり場に困る。
「だって暑いし」
棗は絵衣理を背後から抱きしめ、顎を絵衣理の頭の上にのっけた。
「ナ・・・ナツ君・・・」
「おいおい、母親の前で見せつけんな」
「これ、俺の成績表じゃん」
棗が絵衣理の手から取った。
「なんで、母さんが持ってんの?みせたことないだけど」
「え、ナツ君、うちの学校、毎回テストの成績、親に送られるんだよ?知らなかったの?」
「・・・知らなかった」
「お前、自分の成績わかってる?」
母親が低い声で言った。
「そら、自分の成績だから」
「じゃあ、やばいってわかってるね」
「やばいの?」
棗は飄々としている。
「え・・・えと、赤点取るのはちょっと・・・」
ばん、と棗の母親がテーブルをたたいた。
「次のテストで赤点とったら、絵衣理ちゃんとの交際禁止っ」
「はあ?」
「はあ、じゃない。こんな情けない点数とってっ。ゲームしてる場合じゃないだろうっ」
「あのなあ」
「まってまってまって」
親子喧嘩が始まりそうだったので、絵衣理が慌てて止める。
「ナツ君、一緒に頑張ろう?」
棗がぶすくれた顔をする。
「私、教えるからっ。ね?」
とりあえず、棗と絵衣理は棗の部屋にいた。棗はぶすくれている。
「ナ・・・ナツ君」
絵衣理は声を掛ける。
「あのね、赤点いっぱいとるとね、うちの学校私立じゃん?簡単に留年させられるよ」
「ああーそういえば、いるわ。留年してる人」
「留年するのはやでしょ?」
「・・・まあ」
絵衣理はほっとして言葉を続けた。
「あのね、ちょっと言おうと思っていたことがあるんだ。ついでに言うね?私ね、3年でも特進にいたいの。だから勉強したいの。だからさ、一緒に勉強しよ?」
棗が絵衣理の方を見る。
「去年の試験問題、まだあるから、試験対策しよ?」
「絵衣理もいや?」
「ん?何が?」
「交際禁止」
「うん、やだよ。だから頑張ろ?」
絵衣理は必死に棗を宥める。棗は、はあ、とため息を吐いた。
「・・・」
ころん、と絵衣理の膝の上に頭を載せる。
「ナツ君っ。真面目な話してるでしょっ」
「・・・ご褒美」
「へ?」
「ご褒美が欲しい」
棗が膝の上から絵衣理を見上げた。
「ああ・・・ご褒美。何が欲しい?お金ないから、あんまり買えないけど・・・」
「お金いらない」
「ん?なに?何か作ろうか?」
「・・・」
棗がむくりと起き上がって、じいっと絵衣理を見る。
「必要なのは絵衣理の決心」
「?」
絵衣理はきょとんとする。意味が分からなかった。
「あとは可愛い下着かなー。絵衣理、ピンク似合うと思う」
「え・・・」
棗の『ご褒美』の意味を知り、かあっと顔が赤くなる。
「え・・・いや・・・その」
棗がぐいっと顔を近づける。
「どうする?」
「え・・・あの」
「10秒以内に返事しなかったら、この場で押し倒す」
「は?え」
「じゅーう、きゅーう」
棗がカウントをし始めた。
「ちょっちょっちょっとっ」
「よーん。さーん」
「わかったからっわかったからっ」
絵衣理は慌てて言う。
「ご褒美、あげますっ」
絵衣理はやけくそで言った。
「絶対だからね?言質とったからね?」
棗が顔を近づける。絵衣理は顔が真っ赤になった。
「ナツ君・・・強引。ずるい」
ナツがちゅっとキスをする。
「~~~、ナツくんっ」
「俺、結構我慢してるんだよ?」
棗が真顔で言ってくる。
「絵衣理、無防備だから。すぐに押し倒そうと思えば、押し倒せたのに、我慢してたんだよ?」
「えっと、我慢させてしまって、ごめんなさい」
棗がぷっと吹き出す。
「そこで謝るかなあ」
「だって、他にどうしろと」
「分かったよ、勉強するよ」
そこから、絵衣理と棗の勉強会が始まった。